体位変換をする際の基礎知識

介護サービスの利用者の中には、脳梗塞やくも膜下出血等の脳血管障害、あるいは脊髄損傷などによって寝たきり状態になった、要介護度の高い利用者がいるケースも珍しくありません。そのため、どのような介護現場で仕事をするのであっても、いつでも的確かつスムーズに体位変換できるように、介護職には基本的な知識やスキルを身につけておくことが求められます。

そもそも、寝たきりの利用者に体位変換が必要になる主な理由は、褥瘡の進行を防ぐことにあります。褥瘡とは長時間にわたり同じ体位でいることで、特定部位の皮膚や皮下組織が圧迫され続け、そこから血行障害さらには皮膚のびらんや潰瘍、そして最終的には壊死へとつながっていく深刻な症状を指します。特に、骨が突出した部位は褥瘡が進行しやすいので、介護スタッフがこまめに定期的な体位変換をして体圧を分散しなければなりません。体位変換をする際には、まず対象者の身体状況をよく把握することが、大切なポイントです。一口に麻痺した身体状況と言っても、片麻痺や対麻痺あるいは四肢麻痺や知覚麻痺など、様々なタイプがあります。したがって、介護職は対象者の麻痺した身体に見合った、最適な体位変換の方法を選択する必要があります。

例えば、上下肢に麻痺がある場合には、その部分の筋力が弱っているケースが多いので、何も考えずに無理やり体位変換をすると、肩が骨折したり股関節の脱臼を招くなど、様々な危険を招くことになりかねません。そこで、体位変換をする際には、麻痺側の上肢は胸の上へのせると同時に麻痺側の肘を健側で支え、さらに麻痺側の下肢を健側の下肢の上に置くことによって、常に麻痺側の上下肢を保護する方法が基本になります。